「獄寺ってツナのこと好きだよな?」 「なっ」 山本が放課後、獄寺にこんなことをいってきた。 「好きだよな?」 なかなか答えない獄寺に向かって山本はもう1度聞いた。 獄寺は内心、今の山本の問いかけがクラスの誰かに聞かれていないかヒヤヒヤしていたのだが。 「…だからなんだよ!」 少し小声気味に言った。 怒りを表わしている獄寺に対し、山本はニコニコしている。 「恋のおまじない、教えてやろっか」 「は…!?」 “恋のおまじない”。 その言葉に釣られそうになる。 一瞬、目を光らせた獄寺を、山本は見逃さなかった。 「シャーペン貸してみ」 「なんでオメーなんかに…」 「ツナと、もっと仲良くなりたくね?」 「…」 そう言われてしまっては…。 一途な十代目思いの獄寺は、渋々シャーペンを山本に渡す。 「まずなー。小さい紙にツナの名前書いてー…と」 山本はノートの切れ端に獄寺のシャーペンで“沢田綱吉”と書いた。 「そんでこの紙をシャーペンの中に入れるワケ」 そう言いながら、山本は獄寺のシャーペンを分解し始めた。 その様子を、獄寺はまじまじと見ている。 「分解し終わったら、この紙をシャーペンの中に入るよーにして、組み立てる」 山本がシャーペンを組み立て終わったら、中にツナの名前を書いた紙が入っている状態になっていた。 「うしっ。完成ー」 「…これで終わりか?」 「あとは、ツナ以外の誰にも触らせないことなー」 「…わかった」 その時の獄寺は、心なしか嬉しそうな顔をしていた。 「はー…」 そこに、浮かない顔をしたツナが教室に入ってきた。 「よーツナ。どした?」 「俺また赤点だったから、職員室で怒られたんだぁ」 「その先公ブッ飛ばしてくるっス」 ダイナマイト片手に教室を出て行こうとする獄寺を、ツナが一生懸命なだめる。 その隙に、山本はツナの筆箱からシャーペンを抜き取り、自分の筆箱へと入れた。 「こんなことしてる場合じゃないんだってば! 課題だされたからそれやらないと…あれ?」 「どした?」 獄寺をなだめ終えたツナは、出された課題に取り掛かろうと、筆箱からシャーペンを取ろうとしたのだが、山本が抜き取ったため、シャーペンはそこにはない。 「シャーペンないやー。どこいったんだろ」 辺りを見回してみるが、それらしきものは見当たらず。 それもそうだ。 山本の筆箱の中に入っているのだから。 そんなことは、全く知らないツナは、諦めた。 「…まぁ良いや。あ、獄寺くんシャーペン貸してねー」 「へ…? あ、十代目…! それは…っ」 ツナには触られても良いのだが、シャーペンが半透明なため、ツナが持っていたら中にツナの名前が書いてある紙が見えてしまう。 しかし時、既に遅し。 「獄寺くん、この紙…」 「…!」 見つかってしまった。 きっと『なに俺の名前書いた紙をシャーペンの中に入れてんだよこの変質者!』とか思われる…! と獄寺は思った。 が、反応は獄寺が予想したものと正反対だった。 「これ…」 ツナの顔が、見る見る赤く染まっていく。 「おまじない…」 そうツナが呟いたのを、獄寺は聞き逃さなかった。 「十代目も知ってるんすか…!?」 「うん…山本に、聞いた…」 俺はやらなかったけど。 とツナが後に付け足した。 それを聞いた獄寺は、勢いよく山本の方に振り返った。 そこには、いつもの笑顔より、もっと笑顔な山本がいた。 そしてしまいには 「両思いだなー」 と言い残して教室を出ていった。 取り残された2人は、お互いに顔を合わせられない状態でいた。 放課後の夕日が、彼らをますます朱色に染め上げていった。 +END+ ←Back