「はぁ…」 その日の獄寺は珍しく落ち込んでいた。 「どしたの?」 隣で歩いていたツナは、尋ねてみた。 今は下校中。 いつもの帰り道を山本を含め、3人で歩いていた。 「いえ…実はですね…」 獄寺はぐっと口を結んで、辛そうに言った。 「俺、最も重要な役目が果たせない、って気付きまして…」 「重要な役目?」 「なんだよそりゃぁ」 あまりにも獄寺が真面目な顔で言うので、ツナと山本は笑ってしまっていた。 しかしそんな2人を気にすることもなく、獄寺は真剣な顔のままでいた。 「なんなの? 重要な役目、って」 ツナは笑いながら聞いた。 山本もニコニコしたままである。 しかしこの後、獄寺の発言によって、2人の笑顔は一瞬にして消え去ることとなる。 「子孫繁栄です」 ビシ、と空気が凍りつく。 「やっぱり、それはとても大切なことだと思うんです! ボンゴレの血を絶やさないためにも! しかし…なんの運命のいたずらか…っ。俺は男。十代目も男の中の男…。このまま行ってしまったら…子供が作れません! 男同士じゃ子供が作れませ…むぐっ」 熱弁し始める獄寺の口を、ツナが焦りながら塞ぐ。 獄寺の話はだんだんと危ない方向に向ってきていた。 健全な男子中学生が話す内容ではない。 「なに言いだすのさ! もしも今の会話が誰かに聞かれてたらどーすんだよっ!」 「しかし十代目…! これは重大なことだと思うんですっ」 なおも真面目な顔をして、さも深刻そうな話を話しているように語ろうとする獄寺の落ち着かせるツナ。 その光景を、笑いを堪えながら見ている山本。 「大体、俺には京子ちゃんという女性が―…」 ツナは、しまった、と思った。 京子という女性の名前を口に出した途端、獄寺の勢いがおさまったからだ。 再び、静まり返り重くなる空気。 「あの…獄寺くん…」 そんな獄寺に、ツナはバツが悪そうに話しかけた。 すると獄寺は、泣きながら叫んだ。 「もういいです! 十代目…俺とは所詮、遊びでの付き合いでしかたなかったんですね…っ!」 「んなぁっ!?」 「俺とは、遊びだったんですねぇええっ!」 「はぁーっ!?」 まるで昼ドラのワンシーンのような台詞を獄寺は吐きながら、走っていってしまった。 「…なに、このオチ」 とりあえずその後、泣きながら走っていった獄寺を追いかけることもなく、心配することもなく。 とくに気にも留めずに過ごした2人だった。 一方の獄寺は、「性転換…」と呟きながら、病院の前をウロウロしていたそうだ。 +END+ ←Back